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恒川光太郎 夜市 のレビュー

2009-11-17

作者:恒川光太郎

夜市 (角川ホラー文庫) (文庫)

夜市 (角川ホラー文庫)
恒川 光太郎
角川グループパブリッシング
売り上げランキング: 1923
おすすめ度の平均: 4.5
5 このイマジネーションが時折必要になる人生の方が楽しい!!
5 心地よい
3 面白かったです
5 日式暗黒奇譚
5 怖いけれど憧れてしまう異世界


第12回日本ホラー小説大賞大賞受賞。

過去に弟と偶然迷い込んだ「夜市」では、出るためには何かを買わなければならなかった。「野球の才能」を手にいれ、
弟を売ってしまった主人公。罪悪感を抱き続けながら生き、再び夜市を訪れた。
そこで主人公が取った行動とは?



アニメ化も期待できる、ファンタジック・ホラー


本書は表題作と『風の古道』という作品が併録されている。どちらも似通った設定の作品で、アニメ映画『千と千尋の神隠し』のような異世界に迷い込んだ主人公を描いている。
ホラーと名のつく賞の大賞でありながら、本書は生理的な恐怖を感じさせる描写や、人間の奥底に秘められた狂気の言動・心理表現などはまったくなく、背筋がゾクゾクするような怖さは感じない。

「欲しいものを手に入れたい」そして「手に入れたあと、さいなまれる罪悪感」、さらに「失ったものを取り戻す」といった人間の持つさまざまな欲望や感情が、むしろ全編にわたって抒情的につづられていて、私は少年時代に夢想・空想したような一種ノスタルジックな世界を思い出した。また、実際には存在しえない者や物が登場したり、起こりえない現象が描かれたりしているにもかかわらず、不思議とそれぞれの場面が明瞭な映像として頭に浮かんできた。

本書は「身も凍りつくホラー」をしのぐ、アニメなどに映像化もできる「ファンタジー・ホラー」とでもいうべき文学作品である。


ダークファンタジー


ホラー大賞ということですが、単行本レビューにあるとおり
ホラーというよりダークファンタージーです。
怖さよりも、幻想的な美しさ、妖しさ、もの哀しさが漂います。
また表紙が作品によく合った美しい装丁です。
「夜市」をさらに引き立てているのが、同録の「風の古道」です。
こんな古道があったら、子供でなくても大人だって迷い込んでみたくなるような異界。
魅力的な放浪者が登場し物語に奥行きを持たせています。

すでに単行本を読んではいたのですが、文庫化をこんなに待ちわびた作品は久々です。
風の古道は別のかたちでまた登場して欲しいです。


幽明の扉を開けると・・・


両作品とも、普段は見えないし行くこともかなわないけれど、この世界と隣り合わせに存在している場所を舞台に、話が進んでいきます。幽明のあわいのエアポケット的空間に引っ張り込まれて、ふと気がついたら、ゆらゆらとたゆたう蜃気楼の世界を旅していた、みたいな・・・。作品のそんな空気感を感じましたね。

この世ならぬ妖しい売り買いがそこでは行われている夜市と、ドラえもんのどこでもドアをつないでいる目に見えない通路みたいな古道。長いこと離れていた故郷に久しぶりに帰った感じ、とでも言ったらいいかな。不思議になつかしい気持ちに誘われました。

殊に、その世界独自のルール設定が、作品世界の魅力をいや増している表題作「夜市」が面白かった。百鬼夜行の化け物が跳梁し、店主を務めたりしている夜市の雰囲気は、昔読んだ諸星大二郎の怪奇コミック『諸怪志異(三) 鬼市』の「鬼市(きし)」に通じるものがありました。

表紙カバーの中で泳ぐ三匹の金魚が、本書の風情に錦上花を添えているのもいいですね。印象的なこの装丁は、片岡忠彦。


「夜市」もいいですが・・・


ホラー作品ということですが、妖怪がでてくる点がホラーというだけで、怖いわけではありません。
ただ、読んでいくとすごく透明感のある文章に引き込まれます。そして不思議な空気感をもった作品で、読んだあとにさわやかな感覚になりました。
内容についてはふれられませんが、先の展開が読めなくて、飽きることもなく一気に読み通せました。
ちなみに本書には、短編が 2 編収録されていて、「読むぞっ」と気合いを入れなくてもサラッと読めますよ。


大気がざわめき、風に悲鳴や笑い声が混じりだす


豊かな叙情性、ノスタルジックな感情を喚起せずにはいられない世界/異界。ホラーというよりも、多くの戒めを孕んだ昔噺を聴いているような読中感覚。禁忌的なモノに触れる慄きや、同時に未知を拓く昂揚が充ちている。一切の余剰を廃し、丁寧に紡がれる言葉の磁力はとてつもなく高く、読み手を軽々と異界の空気へと嵌め込んでいく。独特の世界観/その構築力ともに素晴らしいの一言。ラストに至るまで、息つく間もなく流れていく。

併録の『風の古道』にしてもそれは全く同じ。部分部分で先の『夜市』ともリンクしながら、こちらもやはり心の原風景とも言うべき、郷愁を擽る独自の世界を描いている。怖いというより物悲しい、しかし全体に緩やかな昂揚感を湛えるという不思議な作風。ベタな例で申し訳ないが、宮崎アニメに通じる世界を感じた。他に類を見ないタイプの素晴らしい作品。各所での絶賛がそれを物語っている。


失ったものの大切さに気付く時


とはいえ、実際読んでみましたがほとんどファンタジーに近いです。
現実の世界から、気づいた時にはいつのまにか戻ることのできない異世界へ迷い込んでしまったような感覚。
とても幻想的で、それでいて悲しみをたたえた物語にすっかり惹き込まれてしまいました。

望むものはなんでも手に入ってしまうという夜市―。
そして夜市に迷いこんだ者は何かを手に入れるまでは決して夜市から出ることはできないのです。

何かを手に入れるということは、それと引き換えに何かを失ってしまうということ。
そして一度失ったものは二度と戻ってくることはないんですね。
人も、物も、そして過ぎ去った時間も。

一度読んだら忘れられない、印象的な物語です。
「風の古道」も一気に異世界に迷いこんだかのような面白さです!

夜市 (角川ホラー文庫)
恒川 光太郎
角川グループパブリッシング
売り上げランキング: 1923
おすすめ度の平均: 4.5
5 このイマジネーションが時折必要になる人生の方が楽しい!!
5 心地よい
3 面白かったです
5 日式暗黒奇譚
5 怖いけれど憧れてしまう異世界


テーマ : ホラー小説レビュー
ジャンル : 小説・文学

tag : ファンタジー・幻想ホラー

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