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雀野日名子 トンコ のレビュー

2010-02-17

作者:雀野日名子

トンコ (角川ホラー文庫) (文庫)

高速道路で運搬トラックが横転し、一匹の豚、トンコが脱走した。先に運び出された兄弟たちの匂いに導かれてさまようが、なぜか会うことはできない。彼らとの楽しい思い出を胸に、トンコはさまよい続ける…。日本ホラー小説大賞短編賞を受賞した表題作をはじめ、親の愛情に飢えた少女の物語「ぞんび団地」、究極の兄妹愛を描いた「黙契」を収録。人間の心の底の闇と哀しみを描くホラーの新旗手誕生。

トンコ (角川ホラー文庫)
雀野 日名子
角川グループパブリッシング
売り上げランキング: 22785
おすすめ度の平均: 4.0
1 ちょっとマズイくらい面白くない
5 トンコの気持ち
2 二日でコンビに弁当?
4 命を食べる
5 ホラーというより、コメディっぽいけど後でじわりと怖くなる



失われてしまった物への思い


この本に収められている3編に怖さを感じることは出来なかったが、
圧倒的な物悲しさを感じることが出来た。
ネタばれになるので、詳しくは書けないが、そこにいた存在への意識というものをこの著者以上にうまく書ける作家はさほど多くないと思う。
しかも、この著者はまだ新人だというから驚きだ。
次回作を早く手に取りたいと思う。


ホラーの枠に閉じ込めてはならない


この作者は怪談文学賞と日本ホラー小説大賞を受賞しながら、
「怖い話は苦手」と言っている。
たしかに「トンコ」には「ホラー小説らしい怖さ」が感じられない。
各所でのインタビューで「怖い話が苦手な人でも読めるホラーを志す」
と発言しているように、
恐怖系小説を苦手とする人でも読める内容となっている
(装丁もホラー文庫らしからぬ可愛らしさである)。

だがこの作者は「ホラー的恐怖」を極力削り落としている反面、
別の怖さを読み手の心に浸食させてくるのだ。
「自分たちは豚ではなく肉を食べているんだ」と言う人間をじっと見つめる食肉豚。
あたたかい家庭を夢見て虐待親を慕う壊れた少女。
自殺のメッセージを感じとってくれなかった兄を想い続ける妹の死体。
「怖くない人でも読めるホラー」を装いながら、じわじわと心の揺さぶりをかけてくる。
自分の潜在意識下にある偽善や無関心を指さされる「怖さ」とでも言うべきか。
読み終えた今も、この「じわじわ」がなかなか消えずにいる。

ただ、いずれの話にも何らかの救済がある。
それがなければ、こんなツラすぎる短編集は読んでいられなかったと思う。
(「切ない」という言葉では足りない。「ツラい」なのだ)

ホラー文庫の1冊として出版されているが、
断じてホラーの枠に閉じ込めてはいけない作品集だと思った。
そして同時に「怖い話が苦手な人」でも読んでほしいとの作者の意図が、
なんとなく見えたてきたような気がした。


可愛い豚のホラー


トンコは面白くって、本当に解説に書いてあったとおり、読み手を豚化してしまうホラーでした。
食についても考えさせられることになり、これは深いぞと思わず唸らされました。
だけど残りの書き下ろし2作はトンコに比べると凡庸な作品で、落ちも流れも思った通りだったので少しガッカリさせられてしまいました。
妹の死んだ理由がもっと意外だったり、ぞんび団地のあっちゃんが××じゃなかったらもっと面白かったと思います。
文体の書き分けは凄いですが、キャラについてはもっと深みを持たせて欲しかったです。


トンコ (角川ホラー文庫)
雀野 日名子
角川グループパブリッシング
売り上げランキング: 22785
おすすめ度の平均: 4.0
1 ちょっとマズイくらい面白くない
5 トンコの気持ち
2 二日でコンビに弁当?
4 命を食べる
5 ホラーというより、コメディっぽいけど後でじわりと怖くなる


テーマ : ホラー小説レビュー
ジャンル : 小説・文学

tag : ホラー短編集 ファンタジー・幻想ホラー

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