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森見登美彦 きつねのはなし のレビュー

2010-02-17

作者:森見登美彦

きつねのはなし (新潮文庫) (文庫)

「知り合いから妙なケモノをもらってね」篭の中で何かが身じろぎする気配がした。古道具店の主から風呂敷包みを託された青年が訪れた、奇妙な屋敷。彼はそこで魔に魅入られたのか(表題作)。通夜の後、男たちの酒宴が始まった。やがて先代より預かったという“家宝”を持った女が現われて(「水神」)。闇に蟠るもの、おまえの名は?底知れぬ謎を秘めた古都を舞台に描く、漆黒の作品集。

きつねのはなし (新潮文庫)
森見 登美彦
新潮社
売り上げランキング: 17131
おすすめ度の平均: 4.0
5 森見流「陰翳礼賛」
5 伯父たちと酒を飲みながら
5 モヤモヤ
3 趣が異なる森見作品
4 一夜の読み物にどうぞ




美しくてぼんやりとしたはなし


06年10月の単行本の文庫化で,4本の奇譚が収められている短編集になります.

『奇譚』と謳われているように,少し不思議で怖めの物語が収められているのですが,怪談など直接的なそれらとは違い,後からじわじわとくる怖さといった印象を受けます.
また,奇譚自体もよいのですが,そこに至るまでの大半を占める会話や日常描写が美しく,はなしの性質とは裏腹な,暖かく柔らかみのあるきれいな表現がなんとも心地よく感じます.

ともすれば呆気なく,あれは誰だったのか,何だったのかとどれもが曖昧に終わったり,それぞれが別の時間や人たちのはなしのはずも,どこか繋がりのようなものが見えるなど,ぼんやりとしながらもじっとり汗がにじみ,気がつくとその世界へと引き込まれていきます

確かにハッキリしない部分は残りますが,それを含めた余韻を膨らませるのが楽しみどころ.暑い日の昼下がり,たまにはこういう作品で気分を入れ替えるのもいいのではないでしょうか.
一つ一つは100ページにも満たないのですが,思いのほかに濃厚でじっくりと読ませてくれます.

なお,巻末の記述によると,今回の文庫化にあたり改訂が行われているとのことです.


森見流「陰翳礼賛」


魔に魅入られた人の話である。4編収録。最初の3編は登場人物に重なりを認めるが、役柄や時間関係は一貫しておらず、別の物語と考えた方がよい。また最後の「水神」は設定が異なる。

まこと、京都には異界がよく似合うのである。この世には「踏み込んでは行けない領域」があり、不用意に関わりを持つことは運命の破滅につながる。文明化とは闇の排除に他ならないが、今も闇は市井に厳然としてあるのだ、という物語である。私は科学者でありオカルティズムは信じないが、そういう領域がこの世にある方が、人間は謙虚に生きられるのではないか、という気がしないでもない。

本作の最大の特徴はその文体にある。化連味あふれる賑やかなスラップスティックを本領としてきた作者が、ここでは端正な日本語を駆使して怪異を物語る。正統的な文体で見事に編んだ作品であり、作者の力量が本物であることを示していると思う。


趣が異なる森見作品


京都を舞台にした短編奇譚集ですが、これまで読んだ森見作品とは、趣が異なる作品でした。
4つの作品が収められていますが、「芳蓮堂(古道具屋)」「胴の長いケモノ」「狐の面」などのキーワードで繋がっており、連作集といえなくもありません。
もちろん、個々の作品の内容は独立しているので、ひとつの作品として楽しむことも出来ます。

個人的なおススメは、「魔」という作品です。
人の心に潜む薄暗い部分が、ある瞬間に表出するような展開が、とても怖いです。
京都という古い街が持つ独特の雰囲気が、さらに怖ろしさを煽るのかもしれません。

芳蓮堂は何者か?
胴の長いケモノは、本当は何だったのか?
色々な謎は残ったままに終わっていますが、想像力を働かせながら、その余韻を楽しむことにしましょう。


きつねのはなし (新潮文庫)
森見 登美彦
新潮社
売り上げランキング: 17131
おすすめ度の平均: 4.0
5 森見流「陰翳礼賛」
5 伯父たちと酒を飲みながら
5 モヤモヤ
3 趣が異なる森見作品
4 一夜の読み物にどうぞ


テーマ : ホラー小説レビュー
ジャンル : 小説・文学

tag : ファンタジー・幻想ホラー ホラー短編集 怪談

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