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鈴木光司 仄暗い水の底から のレビュー

2010-02-18

作者:鈴木光司

仄暗い水の底から (角川ホラー文庫) (文庫)

巨大都市の欲望を呑みつくす圧倒的な「水たまり」東京湾。ゴミ、汚物、夢、憎悪…あらゆる残骸が堆積する湾岸の「埋立地」。この不安定な領域に浮かんでは消えていく不可思議な出来事。実は皆が知っているのだ…海が邪悪を胎んでしまったことを。「リング」「らせん」の著者が筆力を尽くし、恐怖と感動を呼ぶカルトホラーの傑作。

仄暗い水の底から (角川ホラー文庫)
鈴木 光司
角川書店
売り上げランキング: 247687
おすすめ度の平均: 4.0
5 配列も工夫された短編集
4 生々しい水の臭い
4 湿気を感じる短編集
5 身近にある「死」について考えさせられる
4 生理的な部分に訴えかける恐怖




ハイレベルな短編集


和製モダンホラー最高水準の短編集で、一定の水準以上の作品が揃っているが、冒頭の短編(タイトルは「浮遊する水」だったかな?)の出来があまりにもずば抜けている。
まさに現代の都市怪談のお手本のような作品。
この作品の衝撃には及ばないものの、他も一定水準の多彩な作品が入っており、読書の歓びを満喫できる一冊になっている。


身近にある「死」について考えさせられる


全ての作品に「恐怖」や「死」の要素を盛り込んであるので、確かに「ホラー小説」に分類されるものでしょう。
しかし、この作品に私が全編を通して感じたのは「ユーモア」でした。
「孤島」や「夢の島クルーズ」は特にその要素が強いと思います。
また、ラストの「海に沈む森」は、私も主人公とおなじ「父親」の立場なのですが、「死」に直面した時に自分はどのように行動するのだろうかと真剣に考えさせられる話で、個人的に最も印象に残った作品です。
この短編集で作者は「ホラー小説」の体裁をとっていますが、それは便宜上「死」の要素を入れやすかったからではないかと解釈しています。
幽霊や化け物が出てくる単純に怖い荒唐無稽な話ではなく、だれにも必ず訪れる「死」や人生の中で直面するどうしようもない「現実」を「ユーモア」で包み込んだ上質な「エンタティメント小説」だと思います。


頭から離れないイメージにとらわれます。


水、特に海から得られるイメージは、明るく爽快で開放的なものである。だが、それと同じくして背中合わせに、暗くてどんよりして密閉的なイメージも孕んでいる。
明と暗。昼と夜の違いで、これほど印象が変わるのも海が生きている証拠である。
本書に収録されている七つの物語は、その海や水をテーマにしたホラー短編である。印象に残った作品から言及するなら、ラストの「海に沈む森」で描かれる恐怖は悪夢の総大将のような恐怖で、読んでいて背筋が寒くなった。
映画化もされた「浮遊する水」や「穴ぐら」は生理的な嫌悪をともなう恐怖であり、これはダメな人はまったく受けつけない類の話だろう。どちらかといえば、恐怖というより嫌悪が勝ってると思う。
「夢の島クルーズ」、「漂流船」、「ウォーターカラー」の三作はホラーそのままのテイストで純粋な恐怖、それこそ仄暗い海の底から漂ってくる臭気をともなった、闇に蠢くものへの恐怖を扱っている。
こういうの描かせたらウマイねぇ。肌の粟立つ感じっていうの?もう、とんでもなく気持ち悪くて、究極に恐ろしい。
「孤島」は、この短編集の中では少し感触が異なっている。ナチュラルな現象を扱っていて、ここには奇妙な存在も霊現象も登場しない。
しかし、嫌な感触である。なんとも形容しがたい作品だ。これは長編に書き換えてもっと話をふくらませて欲しいなと感じた。ざっとこんな感じである。
水がテーマなだけに、ホント嫌いな人なら生理的に嫌だろうなと思える場面が多く、そういった意味では虫酸がはしる作品集である。
こういうイメージはなかなか頭から離れることなく、忘れたと思ってもふとしたはずみで思い出したりするのである。たとえば、排水口にからまった髪の毛を見たときなどに。



仄暗い水の底から (角川ホラー文庫)
鈴木 光司
角川書店
売り上げランキング: 247687
おすすめ度の平均: 4.0
5 配列も工夫された短編集
4 生々しい水の臭い
4 湿気を感じる短編集
5 身近にある「死」について考えさせられる
4 生理的な部分に訴えかける恐怖


テーマ : ホラー小説レビュー
ジャンル : 小説・文学

tag : ファンタジー・幻想ホラー ホラー短編集

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